不眠症とはabout
不眠症についての基礎知識
不眠症とはその名の通り眠れない症状を指しますが、ただ眠れないというだけではなく様々な症状があり、主に次のようなタイプに分かれます。
入眠障害
不眠症の方からの訴えがもっとも多いのが、寝付きが悪い、布団に入ってから眠りにつくまで時間がかかるという「入眠障害」の症状です。
一時的な環境の変化やストレスなどで数日間眠れないという程度であれば、原因を考えて対処することにより眠れるようになることも多いですが、背景にうつ病をはじめとする神経症系の病気などが隠れている場合もあります。
その中でも特に「すぐに考え込んでしまう」「気になることが頭から離れない」「気がつくと悩みごとについて考えている」などが続き、それが頭の中でグルグルと回ると、精神的な過活動に繋がって入眠障害が起こる率が高くなります。
また最近多くなっているのは「むずむず脚症候群」と呼ばれる病気で、自律神経系の乱れにより夜に足がむずむずして落ち着かず、眠れなくなってしまうという特徴があります。
中途覚醒を含む睡眠の質の障害
体も心もしっかり休んでいる睡眠であるノンレム睡眠と、体は休んでいるのに頭だけが起きて夢を見ている状態の睡眠であるレム睡眠のバランスが崩れてしまうと、睡眠の質が悪くなり、夜中に目が覚める「中途覚醒」が起こりやすくなります。
緊張感が強い状態のまま眠ってしまったり、体内時計と実際の生活リズムがずれていたりする時にも睡眠の質の低下を招きます。
また、昔からなかなか眠れない時によく使われてきた方法として「寝酒」があり、アルコールを飲むとリラックス効果が得られて睡眠を促してくれるように感じますが、これは逆効果です。
お酒を飲んで意識が混濁した状態で眠りにつくと、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスが大きく乱れて良好な睡眠を得られなくなり、中途覚醒が多くなってしまいます。
短時間型睡眠
ストレスによる不安障害などが現在増えていますが、やはり神経症系の疾病を持つ方は睡眠時間が短くなる傾向が多くなります。
特に、起きるつもりの時間よりも何時間も早く目が覚めて、寝直すことができなくなってしまう状態を早朝覚醒と呼びますが、この症状はうつと一緒に起こることが非常に多いと言われています。
一般的に不眠症だけである場合は、自覚される症状は入眠困難のみという方が多いですが、背景に何らかの疾病がある方の場合は、中途覚醒や早朝覚醒、睡眠の質の障害を伴うケースが多く見られます。
睡眠時無呼吸症候群の可能性も・・・
寝ても疲れが取れない場合に、睡眠時無呼吸症候群と不眠症、どちらを疑うべきか悩まれる方も多いかと思います。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりして、それによって日常生活にさまざまな障害を引き起こす疾患です。
「熟睡できない」「昼間に眠気を感じる」という状態だけではなく、睡眠中に一時的な呼吸の停止や大きないびきが見られる場合には、睡眠時無呼吸症候群を疑う必要があります。
眠っている間のことであるため本人が気付くことは難しく、ほとんどのケースで家族に指摘されて病気が発覚しています。
睡眠時無呼吸症候群は大きく次の2つのタイプに分かれ、相談するべき医療機関も異なります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
肥満傾向の方や、痩せていても体質的に気道を閉塞しやすい方は、横になっているとどうしても軟部組織が重力によって下がってくるために、気道が狭くなって無呼吸が引き起こされます。
狭くなった気道を空気が無理やり通ろうとするため、激しいいびきをかくのが特徴です。
一般に「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれているものは、こちらのケースが大半を占めています。
耳鼻科の領域であるマウスピースなどを用いた治療が有効です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
呼吸をつかさどる脳に問題があって睡眠時に無呼吸の状態が起こり、血液中の二酸化炭素の濃度が適切にコントロールされない病気です。
二酸化炭素の濃度が過度に上がることによって睡眠の質が低下し、日中に傾眠傾向(ずっと眠気が残る感じ)が続きます。
気道には問題がないため、睡眠中にいびきをかくことはそれほど多くありません。
主に薬物療法が行われますが、この症状に有効な薬は中枢の一部賦活傾向があるため、睡眠外来といわれる不眠症だけを扱うセンターなどで治療することが多くなります。
まずはお気軽にカウンセリングを
咳や熱など、何か体に内科的な不調がある時に、まずは一般内科を訪れて診察を受け、内科医の判断によって呼吸器科や循環器科や膠原病科、アレルギー科など、さらに専門的な科に移るということは一般的によく行われています。
それと同様に、睡眠に何らかの問題を抱えている方に対しては、私達のような心療内科のクリニックが道しるべとしての役割を果たします。
一人で悩まずにお早めにご相談ください。
不眠症のサインとは
まず判断の基準となるのは、熟眠感があるかどうか、つまりよく眠れているかどうかです。
「睡眠時間は十分に確保できているのに、朝すっきりと起きることができない」という気分を継続して感じる場合は不眠症の可能性を考えて来院することをおすすめします。
どのような時を「すっきり起きられない」と呼ぶのかという定義は曖昧にはなりますが、「朝になっても気分が上がらない」「仕事の準備が滞ってしまう」「現実に遅刻の回数がとても多い」など、社会生活上、日常生活上の支障が出てきている場合には受診をご検討いただいた方が良いと言えます。
夜中に目が覚めて、その後眠れなくなってしまう「中途覚醒」が頻繁に起こる場合は、できるだけ早く医師の診察を受けた方が良いでしょう。
睡眠手帳の活用
睡眠について不安をお持ちの方は、夜何時に寝て朝何時に起きたか、夜中に一度起きた時は何時に目が覚めて何時にまた寝たのかということを簡単に記録した睡眠手帳のようなものを作る方法が有効です。
毎日記録することで自分の睡眠の状態を把握でき、原因や対処方法を考えやすくなります。
クリニックを受診される際には持参しましょう。
目が覚める時が近付くとレム睡眠が多くなりますが、嫌な夢を見て、それをはっきり覚えているという場合はレム睡眠が優位になっている兆候です。
それにより睡眠が浅くなっているということがわかるので、そのような夢が何度も続く時には睡眠手帳にメモしておくと治療に役立ちます。
不眠症は大きく3つのパターンに分かれるため、うつ病のような細かいセルフチェックというものは決まっていません。
ある程度定まった形があった方がチェックしやすいという方は、千差万別ではありますが、製薬会社などが作っているチェックシートを利用する方法もあります。
自分でできる不眠症対策
不眠症の対策としては、もちろん専門家の診断や治療がもっとも有効ですが、「不安や緊張が漠然と強まる」「考え込んでしまう」「自立神経系の乱れによる動悸や足がムズムズする感覚が消えない」などの状態がなくなり、日常生活に支障が出ないようになれば、自分でできる範囲内のケアでも十分対応できます。
次の点をご自身で心がけることで、睡眠の質が向上して朝もすっきり起きられる道が開けます。
- 食事を取った直後は腸管の動きが激しくなり、自律神経系も含めた精神活動が乱れやすくなるため、入眠が悪くなりがちです。
食事を取ってから3時間ほど経っていれば胃腸が落ち着いた状態で眠りに入れます。 - カフェインには覚醒作用があり、入眠に影響します。夕方以降はコーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲み物は避けましょう。
- 熱い湯船に入った後すぐに寝ようとすると逆に眠れなくなることが多いです。
人の体温は基本的に朝一番がもっとも低く、次第に上がっていき、夕方に高くなってからまた落ちてくるところで眠りに入りやすくなります。
お風呂を出て、ある程度体のほてりがなくなってから寝ることでスムーズに眠ることができます。
一回眠れないという習慣ができてしまうと、「また眠れなくなるのではないか」という不安感に繋がり、さらに不眠の状態になるという悪循環に陥ることがあります。
上に述べたような知識を元に、自分にとって眠りやすいタイミングや時間帯を生活のリズムの中で体得していくことで、睡眠の質が徐々に向上していきます。